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古き良きものは、常に新しい。

Global Long-Term Partnership" 
「長期的な取引を志し、共に汗を流し笑顔になる」 Amina collection

2021.12.04Asami Narita (Kastane buyer)

CONTRIBUTED BY

 Tokiko Nomura/Yusuke Takeuchi

Tokiko Nomura/Yusuke Takeuchi

Amina collection Designer/ Chief

Global Long-Term Partnership”  「長期的な取引を志し、共に汗を流し笑顔になる」

「互いに支え合い、共存、共栄する関係を築くこと」を目指し、長年に渡りネパールやインドなど、様々な国と長年にわたり交流を続けてきた企業「アミナコレクション」。特にネパールとの交流の歴史は長く、来年で40年を迎えるそうです。前回の記事で紹介したハンドニットの取り組みは「家庭でもできる女性の仕事を増やし、女性の自立支援向上に貢献した」として、過去にネパールの文部大臣から表彰されていますし、今ではなんと、ネパールから日本への全輸出額のうちの約15%をアミナコレクションが担っています。今回は20年以上に渡ってアミナコレクションで活躍されている野村登希子さんと竹内裕亮さんにお話を伺いました。

Q:最初に海外との取り組みを始めたきっかけを教えてください。

竹内)アミナコレクションの創業者は、元々は民族学の教師だったんです。彼は仕事でトルコやインドなどさまざまな国に渡って自ら現地の人と直接触れ合ううちに、次第に「学者として文化を研究していく立場よりも、もっとフェアで対等な関係性で人と関わりたい」と感じるようになったそうです。そこで、お互いの幸せのために共に成長していける「ビジネスパートナー」としての関係性こそが自分が求めている形なのではと考え、この仕事を始めました。

私たちはビジネスを通して「人と良好な関係で居られること」と「大事な文化や技術を残し伝えていくこと」の両立を目指して活動しています。ものづくりで得たお金を現地の文化の発展のために還元することがとても大切で、その循環ができないのならその仕事に取り組む意味はないと考えています。だからあくまでも対等でありながら、長く継続できる関係性であることが大事なんですね。これは、45年前からずっと我々が大切にしてきた信念です。また、文化や技術を絶やさないことは、我々が出来る身近な「SDGs」の取り組みのひとつでもありますしね。

 

Q:ネパール以外の国との取り組みについても、お聞かせください。

竹内)1番最初に買い付けをした国は、実は韓国なんです。創業者が民族学に没頭していた際に訪れた韓国で、とある1つの壺を見つけ、なぜだかそれに大きなインスピレーションを感じてしまったらしいのです。その壺は特に奇抜な柄や色のものではなく、素朴でシンプルなデザインだったようなのですが、いわゆる、「ビビビときた!」のだと聞いています(笑)。彼はその場にあったすべての壺の在庫を買い占めて、日本へ持ち帰り販売を始めました。それをきっかけに彼は、インド、ネパール、インドネシア、タイなどのアジア諸国をはじめ、ヨーロッパやアフリカなど様々な国を渡って、伝統ある作品やまだ見ぬ素晴らしい文化を探すことにのめりこんでいきました。

彼は年を重ねてからも、自ら精力的に海外に足を運び続けていました。例えばアフリカでマサイ族の住む村に行った時には、厳しい「洗礼の儀式」をやり遂げ本物のインディアンジュエリーを買い付けてきたり。バイタリティが溢れる凄い人だったのだな!と、今もずっと尊敬しています。

 

Q:お二人ともアミナコレクション歴約20年とのことですが、これほど長い期間続けられた理由は?

竹内)やりがいのひとつは、色んな国の文化を知ることができること。僕は若い頃から海外に興味があり、学生時代はバックパッカーとして世界を旅していました。そんなこともあって就職先を探すにあたって決め手にしたのは「海外に行けるかどうか」という、実にシンプルなことでした(笑)今は無くなってしまった制度なんですが、当時「アクセス休暇」という休暇制度があり、丸々1か月まとめて休みがとれたんです。僕はその制度を利用して、長期間南米にいったり、アマゾン川の近くで生活したりもしました。どれも初めての経験ばかりで、刺激的でとても楽しかったことを覚えています。

もうひとつ大きいのは「いいものづくりをして、それを売ること」、そして「海外の文化や産業を成長させる」というミッションがあることですね。わたしたちの企画の軸は「トレンド」ではなくその国の「文化」によるもので、そこが他の企業と大きく違うところでもあるんです。

 

野村)出張がとにかく面白いんです。弊社で出張に行くにあたってひとつだけ決まりごとがあるのですが、それは「その国の”文化”を感じられるところに、必ず1か所は行く」こと。だからわたしも藍染めのポットを製作する村を実際見に行ったりしました。「本当に手作業でやっているんだ!」と驚かされましたね。いわゆる「旅行」ではなかなか目的地にならない場所や、そもそも普通には行きづらいところにも足を運ぶようになったので、この会社の出張でしかできない貴重な経験をさせていただいていると感じています。

もうひとつのやりがいは、シンプルに「現地のものが好き」ということですね。どんな国でも現地を訪ねてみると、国境や世代を超えて大人から子供まで愛されるものや、人間らしい感受性に訴えかける愛に溢れた作品がたくさんあるんです。伝統のある民族が作るものって、なんだかすごく力強くて、人を惹きつけるエネルギーを持ったものや、独特で「アク」の強いものなど本当にたくさんの魅力的な作品がある。「マニアックだな~」と思いながらも、見れば見るほど「やっぱり好きだな~!」と思ったり。その繰り返しです(笑) 

 

Q:思い出に残っている旅を教えてください。

野村)7~8年前に旅したモロッコですね。その旅は久々の一人旅ということで、出発前に既に緊張と興奮がピークに達していました。モロッコまで約16時間の渡航を経て現地に着いて、そこからさらに汽車での移動。8月で真夏の気温の中にも関わらず車内のエアコンが壊れていて、命の危険を感じるほどの暑さでした。やっとの思いで予約していたリヤド(古い邸宅を改装して作られた中庭付きの宿泊施設)に到着すると、現地の人がミントティーを淹れて出迎えてくれたのですが、それが頭が痛くなるくらいの甘さ!!でも長旅と暑さと緊張でくたくたの体にこの甘さとミントのさわやかさが染み渡って、そのときのわたしには「最高の一杯」に感じられたんです。あの時の味は今でも忘れられません。

さらにモロッコ滞在中に、砂漠のテントに宿泊するツアーにも参加しました。首都のマラケシュから車で1日半かけて砂漠の入り口付近まで向かうと、そこから先は砂漠の民である「ベルベル人」に先導され、ラクダに乗ってテントまで向かうという経験をしました。

前情報で「砂漠で見る星空がすごい!」との触れ込みがあったのですが、田舎育ちの私は「満天の星って言っても、実家でも毎日のように見てたしな。」なんて思っていました。でも実際夜になってその景色を目の前にしたとき、その壮大さに度肝を抜かれました。砂漠ゆえの空の広さと、夜の本当の暗さ、そして乾燥して澄んだ空気。感動のあまり怖さを感じるほどでした。モロッコの満天の星空を前に、おしゃべりな私が言葉を失ったのを覚えています。

 

竹内)学生時代に人生で初めて行った海外旅行の経験がインドだったのですが、この仕事を始めてからもメーカー工場の生産背景の確認のため、幾度となくインドへ渡航するようになりました。各メーカーの工場を目の当たりにし説明を受けるたびに、いかに生産工程が複雑で入り組んでいるかが分かってきました。「繊維製品の製造数量」という点でインドの繊維産業は世界のアパレル産業の中でもトップクラスに位置しているのですが、その大ざっぱなお国柄とは似ても似つかないほど産業の構造は複雑で、分散化、細分化された小規模な工場、工房が多く存在していたことに衝撃を受けたのを覚えています。

インドの首都のデリーから電車と車で6時間のルディアナ地域は毛織物の生産が盛んなのですが、「なぜわざわざこんな北部の僻地で生産しているのか」と現地の人に尋ねると、「他の地域に比べ水が格段に綺麗で糸の染めも断然美しく上がる」ということらしく本当に驚きました。デリーが水質レベル1だとすると、ルディアナはレベル5らしく(レベルが高いほど綺麗)、ほかの地域から水を運ぶ手間をかけてまでも、いい水質で生産を行いたいという人もいるくらいほど。日本でも同じような理由で存在する産業があるように、「なるほど、しかるべき理由があってこの生産地だったんだ」とまた納得してしまいました。

インドの生産現場を知れば知るほど、予想以上に膨大な労力と時間が掛かるものだと改めて実感します。はっきり言って、手っ取り早く商品を作りたい人には絶対にお勧めできません。しかしそれにも関わらず僕たちがハンドワークにこだわってモノづくりをしてきているのは、様々な人の手を介して生まれ、その人々の想いが何重にも積み重なって店頭に並ぶ商品は「お金以上に大事ななにか」を作り出すことができるからだと思っています。

Q:今後やってみたいことはありますか?

野村)一緒に出張行きたいです!(笑) Kastaneの世界観に合うものがいっぱいありますよ!現物のチャイグラスとか食器とか、インドのマーケットフェアなんかをやっても面白いしかわいいですよね。現地の文化に触れて空気感を感じることが、今までにないような新しいモノが生まれるきっかけになるんだと思います。そうやって一緒に新しい価値を見つけていけたらいいですよね。

竹内)「古き良きものは常に新しい」という僕の好きな言葉があります。僕たちが関わる現地メーカーの多くは、伝統芸能のように代々手仕事を継承しています。間接的ではあるけれど、こうした文化を見守り維持するお手伝いをすることが使命なのかもしれないと感じています。だから、まだまだこの会社でやるべきことがたくさんありそうです!

成田)___ありがとうございました! 他では真似のできない独自性、そしてものづくりの背景に感じられる人の温かみ、アミナコレクションのそういった魅力が、好奇心旺盛で「人」が大好きなKastaneガールズたちを虜にしているんでしょうね。

今後は「私たちのひとつひとつのアクションが誰かの笑顔に繋がっている」ということを強く想いながら、私自身もものづくりを楽しんでいきたい、そう心から思います。

Buyer 成田麻美