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From hand to hand.
"CHOTA Knit" made in Nepal.

Kastaneのものづくりを支える生産者たち。

私たちが10年以上に渡ってお付き合いをさせていただいているネパールのハンドニット工場に、リモートインタビューをさせていただきました。工場を営むプラカシュさんに、生産背景やハンドニットができるまでのストーリーを伺います。

2021.11.26Asami Narita (Kastane buyer)

CONTRIBUTED BY

Ghimire Prakash

Ghimire Prakash

President of a knit factory in Nepal.

Q:プラカシュさんの経歴を教えてください。

ネパールでニットの工場を営んでいます。この工場を始めたのは2000年からなので、今年で創業22年になります。最初の頃はヨーロッパを中心に活動していて、ミラノやパリに向けた展示や販売をしていました。そのうち東京ビッグサイトなどでも展示をするようになって、だんだんと日本との取引が増えていきました。今では日本とネパールを1か月ごとで行ったり来たりしています。

Q:生産にはどのような人が関わっていて、どんな環境で働いてますか?

工場は空港からすぐそばの、首都であるカトマンズにありますが、そこで働く人ばかりではありません。カトマンズは盆地で周りに山があって、その中にたくさんの村があります。ほとんどの編み手の方は、そうした村に住む「お母さん」たちです。彼女たちは、「子供を学校に行かせている合間の時間に編み物をする」という生活をしているので、工場までは働きに来れないのです。近所の人たちと家の近くやお寺などに集まってニットを編んでいるのです。

ネパールには「族」とよばれる民族の種類が多数存在してるのですが、カトマンズで編み物をしてくれているニッターさんは、「ネワール族」と呼ばれる人たちが中心です。集まってくる人々は、使う言語も文化も、服装も本当に様々です。

ニッターさんの数は、全部で300人ほど。全部で35の村があり、村ごとにリーダーがいて、その下に8人~10人くらいの編み手がいるという体制です。「セーターが編めるところ」「手袋が編めるところ」と、地域ごとにできる内容も異なります。私たちは、その村の特色に合わせて仕事の依頼をしていくのです。

 

Q:1つのアイテムのサンプルが上がるまでの流れを教えてください。

まず、工場で私たちが毛糸などの材料を手配し、染色します。

その後、各ブランドから依頼のあったデザインの「見本サンプル」を工場で一枚だけ作ります。そのサンプルを村へ持って、村の人たちに集まって見ていただき、見本と同じように作れるように教えるのです。

Q:仕様書などをベースに作るわけではないんですね?

そうなんです。ニッターさんたちは学校に行っていない人も多く、中には読み書きができない人たちもいるので、仕様書などで指示をするのが難しく、1枚の実物サンプルを頼りに商品を完成させていくんです。サイズや厚みもメジャーなどを使って計測するのではなく、サンプルと重ねたり並べたりしながら、同じものになるよう調整していくのです。

Q:大変なことは?

手編みなので、サイズ感やクオリティを安定させるのが難しい。クオリティへの価値観も人それぞれなので、意識を揃えるよう促すのもわたしたちの役割ですね。それと、時間、納期を守っていただくこともなかなか難しいです。ネパールはお祭りやイベントが多いので、ニッターさんがそちらを優先してしまったりすることもしばしばありますから(笑)。時には畑の収穫などを優先してしまうこともあります。だからこそ編み手の方たちとコミュニケーションをとって、納期を管理していかなければなりません。

 

実はネパールには編み物ができない女性はいないんです。誰もが当たり前のように、自然に身についている伝統的な手仕事なんですよ。

 

私がこの仕事をしたいと思ったのは、そんな素晴らしい技術を持つネパールの女性たちが、家にいながらも技術を生かせる仕事環境を作れないか、と考えたから。日本に初めて行った時には、飛び込みでお店を一店舗一店舗歩いてまわり、サンプルや編んだものを紹介していきました。そうして得た仕事を持って帰ると、村の人たちにとても喜んでもらえて嬉しかったことを今でもよく覚えています。もちろんいろいろな問題はありますが、編み物が完成させる達成感を感じられること、そして自分の力でお金を稼ぐことができてみんなが幸せそうにしている顔をみられることがやりがいです。時間を有効活用して村の生活が豊かになり、その上お客様にも喜んでいただける、そんな風にみんなが幸せになることは、とても素晴らしいことだと思います。

ネパールでは、10月に1年に1回だけ行われる大きなお祭りがあるんです。村の人々が一堂に集う、お正月のような日ですね。その時に、みんなで、「また1年頑張ろうね。」と励まし合ったり労わりあえたりする時間がとても好きなんです。

Q:プラカシュさんが今後、やってみたいことはありますか?

やってみたいことは、もうどんどんやっていると思います(笑)。 20代の時からずっと日本でネパールの文化を紹介したり、現地のハンドメイドの作品を販売したりしてきました。だから今度は「日本の文化をネパールに紹介する」という反対のことをやってみたいですね。ちなみに今年の1月からは、ネパールで日本食レストランを始めました。

「MATSURI TOKYO」という日本食の居酒屋ですが、超人気なんですよ! 働いているのは、みんな日本での生活を経験しているネパール人で、日本語を話せる人が多いんです。もちろん、挨拶は「いらっしゃいませ」から(笑)。お店のインスタグラムもあるのでぜひ見てください。こんな感じで、これからはメイドインジャパンのものをネパールで紹介したり、日本の文化をネパールへ伝える仕事をしていきたい。ビジネスというよりも、やっぱり「自分が本当に良い」と思った文化を伝えていくことが好きだし、今後も精力的にそういった活動をしていきたいと思っています。

Q:今回生産をして頂いたクロップド丈のチビニット。その名もチョタ(ヒンディー語で小さい、の意)ニットについてお聞かせください。

 

この商品はカトマンズから30kmほど離れた「パノウティ村」というところで作ってもらっています。この村は古い建物が多く、日本でいう京都のようなイメージです。

この村のニッターのリーダーは私の同級生で、もう20年の付き合いなんです。このニットは工場に来るネパールの若い人たちみんなが「かわいい!これなら私も着たい。」と言っていましたよ。なにより暖かいのが良いですよね。

 

(成田)__そう言っていただけてとても嬉しいです! ありがとうございました。

ネパールのハンドニットは、存在感があって機械で編んでいるものとは一味違う温かみのある印象が本当に素晴らしいんです。ご購入いただいた方の中には、「また来年も欲しい」と言って下さるお客様がたくさんいらっしゃいます。今回、実際にニットを生産されている方のお話を直接聞くことができて、私たちもさらにこのニットたちをさらに愛おしく感じました。このハンドニットシリーズが長い間たくさんのお客様に愛され続けてきた理由に触れることができました。

 

次回は、このネパールとの取り組みの仲介をはじめ、アフリカやインドなどたくさんの国と企業を繋ぎものづくりを続ける「アミナコレクション」の竹内さんと野村さんのお二人にお話を伺います。

後半もどうぞご覧ください。

Buyer  成田麻美